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ハンモックサウナの温熱負荷と安全性

― 既存の医学的知見をふまえた整理(概説)―

(介護施設様向けご説明資料)

本資料は、ハンモックサウナの構造や利用姿勢が、利用者様の身体にどのような影響を及ぼしうるかについて、現在公表されている既存の医学的知見を参考に整理した概要です。

介護・福祉分野での安全なご利用を最優先に、本資料は「科学的に合理的と考えられる範囲での説明」としてご確認いただければ幸いです。

※ハンモックサウナそのものを対象とした臨床研究は現時点で存在していないため、「一般的な温熱刺激」「仰臥位姿勢」「湿度と呼吸」「静水圧」に関する既知の知見を基に整理しています。

 

1. 温熱刺激(サウナ・入浴)に関する一般的な知見

温熱環境に入ると、以下のような生理的変化が起こることが報告されています。

  • 一時的な心拍数の増加

  • 末梢血管の拡張

  • その後の軽度の血圧低下

  • 発汗による体温調整

フィンランド式サウナなどの研究では、こうした変化が健康指標と関連するとする報告もありますが、因果関係を示すものではないとされています。

高齢者の温浴に関しては、急激な体温変化が負担につながる可能性が指摘されており、穏やかな温め方が望ましいとされています。

 

2. 湯船入浴との比較:静水圧の影響

高齢者の入浴におけるリスクとして、静水圧や温度差による負担が挙げられています。

湯船につかる場合、

  • 水圧によって血液が中枢側へ移動し、心臓への負担が増える

  • 立位 → 入浴 → 立位の体位変化が急激

  • 浴室と脱衣所の温度差による血圧変動

などが重なるためです。

一方、ハンモックサウナは身体が湯に浸からないため、静水圧による前負荷の増大が生じにくいという点で、一般的な入浴とは異なります。

ただし、蒸気による温熱刺激はあるため、体温上昇に伴う循環動態の変化には注意が必要です。

 

3. 仰向け姿勢が循環に与える影響

姿勢は血液循環に大きく影響を与えるとされています。

  • 立位・座位:重力の影響により血液が下肢へ移動しやすい

  • 仰臥位:血液分布が比較的均等で、循環が安定しやすい

仰臥位では静脈還流が安定しやすく、姿勢変化に伴う血圧変動が起きにくいことが知られています。

ハンモックサウナは仰臥位で利用する構造のため、姿勢変化による急激な循環変化を生じにくい点が特徴として挙げられます。

 

4. 高温多湿と呼吸器への影響

高温多湿環境における呼吸負荷については、以下が指摘されています。

  • 気道への熱ストレス

  • 呼吸仕事量の増加

  • COPD・喘息など呼吸器疾患の悪化の可能性

ハンモックサウナでは、頭部が蒸気空間の外に位置する構造になっているため、湿度の高い空気を直接吸入する量が比較的少なく、呼吸のしやすさへの配慮が可能な設計と考えられます。

 

5. のぼせ・頭部過加温への配慮

一般的なサウナで生じる「のぼせ」は、頭部への熱負荷が一因とされています。

ハンモックサウナでは頭部が外気に触れる位置にあるため、体幹部を温めながらも頭部温度の過度な上昇が起こりにくく、めまいや息苦しさへの配慮に繋がる可能性があります。

 

6. 体圧分散とリラクゼーション

ハンモック構造は、背部や腰部などへの局所的な圧迫を軽減しやすいとされています。

介護領域でも「体圧分散」は血流保持や負担軽減の視点から重視されており、これに温熱刺激が加わることで、筋緊張の緩和やリラックスしやすさが得られやすい環境と考えられます。

 

7. ご利用にあたっての前提

前述のとおり、ハンモックサウナには「構造的に負担を抑えやすい特徴」がいくつかありますが、いずれも医学的効果を保証するものではありません。

特に以下の場合には、事前の体調確認が必要です。

  • 心疾患

  • 高度の高血圧

  • 呼吸器疾患

  • 脱水傾向

  • 発熱・感染症疑い

最終的な利用可否は、医師・看護師・介護職員など、専門職による判断が不可欠となります。

 

8. まとめ(介護施設様での位置づけ)

ハンモックサウナは、

  • 湯船の静水圧がかからない

  • 仰臥位で循環が安定しやすい

  • 頭部が蒸気外で呼吸しやすい

  • のぼせに配慮した構造

  • 穏やかな温熱刺激

  • リラクゼーションを得やすい姿勢

といった特徴を持つことから、

「入浴が難しい日」「軽度の温浴ケアが必要な場面」などで、
利用者様の状態に応じて検討いただきやすい選択肢のひとつと考えられます。

ハンモックサウナが、利用者様にとっての小さな楽しみや安心感につながるような役割を担えれば幸いです。

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